岩田 忠久

Tadahisa IWATA

日仏工業技術会会長(東京大学大学院 農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 高分子材料学研究室 教授)

岩田会長

本年6月の総会で菅武彦会長の後を受け、1955年に創立され、「工業技術」を軸として日仏間の交流を推進してきた伝統ある日仏工業技術会の会長を拝命いたしました。

昨年1月に中国で新型コロナウィルスが検出されて以来、われわれの生活は一変いたしました。特に教育・研究現場では長期間にわたる休校と対面授業に代わるオンライン授業を強いられ、学会では講演会・研究会などほとんど全ての活動を事実上の停止しなければならない事態となりました。本会も毎年数回開催していましたシンポジウムを行うことができず、全ての委員会もオンライン会議となりました。特に、海外との往来は完全にシャットアウトされ、本会が最も大切にしておりますフランスとの交流も非常に厳しいものとなりました。

しかし物事は、常に前向きに考えなければなりません。今回のパンデミックにより、小学生に至るまでタブレットを配布してオンライン授業を行うなど、教育現場ではデジタル化が一気に進みました。また、テレワークの導入により、移動にかかる時間が節約されるとともに、参加者の場所を問わず、より簡単に会議やシンポジウムに参加できるようになりました。最近では、国際会議も時差があるもののオンラインで開催され、少しでも情報交換・交流を続ける試みがなされています。

本会もこれからは新しいやり方で会員の方々との連携を深め、交流を活発化しなければなりません。幸い、編集委員会の皆さんと若い会員のご努力により、年2回の会誌とフリーペーパー(L’Echange)の発行は予定通り行うことができており、大変感謝しています。

今回会長をお引き受けするに際し、会員の皆様との連携の強化および新たな会員にご入会いただくことを目的に、以下の内容を提案させていただきたいと思います。

  • 連続オンライン講演会の企画と無料公開:3か月に一度、これまでの本会が得意としていた鉄道交通、情報通信、建築都市計画、原子力などの領域に加え、高分子、金属、医療、健康、地球環境など様々な分野を取り上げ、その分野の専門家に専門でない方にもわかりやすく講演を行っていただく予定です。今年度は、非会員の方にも無料で公開いたしますので、ご興味のある方はぜひ度参加いただき、日仏工業技術会を知っていただくきっかけにして頂ければ幸いです。
  • 情報発信の場としてのHPの充実:HPをタイムリーに更新し、連続オンライン講演会を始め、様々な情報を発信します。
  • フランス大使館、在日フランス商工会議所、日仏会館、日仏関連学会との共同シンポジウムの開催:フランス大使館、日仏会館を始め、フランスとの交流を目的とした関連団体との連携を密に行い、共同シンポジウムを開催します。
  • オンライン見学会の開催:新型コロナにより中止となっていた企業研究所あるいは公的研究機関等への見学会を再開します。訪問が難しい場合は、フランスの大学・研究所あるいは企業に依頼し、オンライン見学会を企画したいと思います。
  • 新会員の入会に向けた取り組みの強化:これまで本会の会員は、元フランス政府給費留学生、国立研究所などからのフランス政府研究機関派遣者、企業におけるフランス駐在経験者など、主にフランス滞在経験者が中心でした。これからは大学、企業、公的機関に先の連続講演会を始めとする積極的な情報発信を行い、フランスに興味のある研究者・技術者・学生など、一人でも多くの方に入会していただくための取り組みを行います。
  • 会誌の拡充とフリーペーパー「L’Echange」の有効利用:会員からの寄稿を広く募集するとともに、連続オンライン講演会の演者にも寄稿をお願いし、幅広い知識・情報が得られる会誌となるようにしたいと思っています。

分野を越えた多くの方々に本会を知っていただき、フランスとの交流を希望している方はもとより、一人でも多くの方に本会の活動に参加してくださることをお待ち申し上げております。

岩田忠久略歴
1989年 京都大学農学部林産工学科卒業、1991年 修士課程修了
1992年 フランス政府給費留学生、CNRS-CERMAV(グルノーブル)留学
1994年 博士課程修了、博士(農学)
1996年 理化学研究所高分子化学研究室 研究員
2006年 現所属 助教授
2012年 同上 教授
2018年 東京大学総長補佐
受賞:繊維学会賞(2006年度)、ドイツイノベーションアワード(2010年度)、高分子学会賞(2018年度)、文部科学大臣表彰(2021年度)