日仏会館傘下の自然科学系8学会は、毎年「科学シンポジウム」を開催しています。今年は 12月12日(土)に「温暖化と環境」をテーマとして講演会を開催いたします。詳細は以下の通りです。
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「温暖化と環境」
地球温暖化によるさまざまな環境問題が、私たちの生活に変化をもたらしています。世界ではCO2排出削減に向け真剣な取り組みが始まろうとしています。今年の科学シンポジウムでは、生活や健康に対する影響と対応について講演ならびに質疑の時間をもうけ、活発な意見交換をしたします。
本会会員の富永先生、大森氏がモデレーターとして参加いたします。
日時 2009年12月12日(土)13 :00~19 :00
会場 日仏会館ホール(入場無料)
プログラム
13 :00-13 :10 池田忠生(日仏会館学術委員)
13 :10-14 :40 座長 富永 健(日仏工業技術会)
「地球環境変化とその対応」
深澤 理郎 氏(海洋研究開発機構地球環境変動領域長)
14 :50-16 :20 座長 大森大陸(日仏工業技術会)
「温暖化に対応できる食料・農業の最前線」
森永 邦久 氏(独)農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所研究管理監)
16 :30-18 :00 座長 池田忠生(日仏獣医学会)
「温暖化にたいする感染症の対策」
小林 睦生 氏(国立感染症研究所昆虫医科学部長)
18 :00-19 :00 < 懇 談,Buffet amical >
主催:財団法人日仏会館
日仏医学会、日仏海洋学会、日仏工業技術会、日仏生物学会、日仏獣医学会、日仏農学会、日仏薬学会、日仏理工科会
講演会報告:
このシンポジウムの主催は日仏会館と本会を含む自然科学系8学会で、今年の「温暖化と環境」というテーマは、これらすべての学会の分野を包括するぴったりのテーマ設定であった。3名のスピーカーの前提は、2007年のIPCCで確認された「地球温暖化は確かに存在し、少なくとも20世紀後半については人為起源の二酸化炭素増加が原因となっている可能性が高いが、他方、地球が第四氷河期にある中での状況にあることも忘れるべきではない」ということで、以下のアプローチからその分野の現象と対策が話合われた。
まず、『地球環境変化とその対応』として、深澤理郎氏(海洋研究開発機構地球環境変動領域長)から、地球温暖化は海洋に多くの変化をもたらしている。海水上昇や北極海水の減少、また人為的なものとして「海洋酸性化」、対流の変化の気候への影響についてその認識と理解の必要性を述べられた。次に、『地球温暖化に対応できる食料、農業研究と技術開発の最前線』として(独)農業・食品産魚技術総合研究機構の森永邦久氏から、CO2が原因とされる2年前のオーストラリアの干ばつに象徴されるように、温暖化の影響は我が国に高温化をもたらし、水稲を始め、果樹、野菜他にいたる全ての生産で品質低下が生じていること、将来は北海道のみが生産適地になるであろうこと、それを抑制するために新しい品種の育成と生産性の確保の必要性を話された。ただし、質疑の中で、これはあくまで、温度の観点にたってのみの考え方であることを付け加えられた。最後に、『温暖化に対する感染症の対策』と題し、国立感染症研究所昆虫医科学部長の小林陸生氏から、マラリア、テング熱、日本脳炎などの最近の感染症の拡大は、元来、人類に存在していたものが地球温暖化による大気温度の上昇に伴うこれらの感染症の媒介となる蚊の拡大を招いたこと。それに生活環境の劣悪のままの都市化、人口密集化の拡大といった人為的環境要因と複合したものであり、この両面から、原因、対策の究明を図る必要性とその学問的、実践的な努力を指摘された。
講演と活発な質疑応答で予定を20分もオーバーし、後のワインパーティでもさらに話題は盛り上がった。このシンポジウムをもっと世間に周知すれば、我々の日仏間の科学、技術の交流拡大に役立つのではないかと感じた。(佐藤純一・日仏工業技術会常務理事)