フランスの交通まちづくりと都市生活
La politique des transports urbains en France

望月真一 Shinichi MOCHIZUKI

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La politique des transports urbains est devenue de plus en plus importante dans les politiques urbaines des villes fran溝ises. Le syst塾e institutionel concernant des transports urbains est bien int使r et il est un des plus performants dans le monde entier. Apr峻 la r志ssite de lユintroduction du tramway dans la ville de Strasbourg, il nユest plus seulement utile de lユam始agement urbain, mais est devenu aussi le symbole de la politique de la ville.


20世紀はオートモビルの時代で、自動車の存在なしに今日の豊かな生活はあり得なかっただろう。しかし、現在の車優先の都市では様々な問題が多様な形で顕在化している。活発な都市活動を支える諸活動の高度な集積地である都心部において一人のための、しかもわずかな時間しか使われず膨大な都市空間を浪費する交通 手段は相矛盾し、自動車優先の都市を維持するには無理がある。
日本でも、中心市街地の停滞状況が全国一律に蔓延し、専門家は車優先社会の修正が重要とようやく認識するようになってきた。しかし、一般 常識までにはなっていない。一方、ヨーロッパではエネルギーへの危惧が引き金となったのであるが、70年代の石油ショックを契機に石油への過度の依存の車優先の都市づくりを修正した。歴史的に延々と築き上げてきた都市が疲弊し、空洞化現象への危惧も後押ししていたことも見逃せない。その成果 がこの10年ほど顕著に認められるところとなり、日本の都市と生活の質において大きな差を示してきた。フランスも特にラテンの都市文化を大切にする背景もあって、豊かな都市生活を保障する都市整備に力を入れ、特に交通 まちづくりを展開していることが特徴的である。
街が生き生きとにぎわい、豊かなコミュニケーションが交換される諸活動の中心であり続けるためには、都市は人が「住み」、「集まる」という都心居住と都市交通 が最も重要な要素であると観察される。しかし、奇しくもこの領域は都市計画の中でも日本の最も脆弱な部分といえる。
その中心的テーマとして都市交通がある。フランスの街中を歩いていると、多くの人々が行き交い、日本の地方都市の老人ばかり目立つ状況と違い若い家族と子供が実に多いことに驚く。都市交通 に力を入れる街では、さらに乳母車と車椅子がまた目立つ。交通面では世界でも唯一「人の交通 権」を制度として位置づけている成果だろうか。
充実した都市交通を都市行政サービスとして合理的に効果的に達成する制度が整っている。世界でも飛び抜けているフランスでさえも、社会変革といえるような変化の努力を断行してから、成果 が眼に見えるようになるまでほぼ20年がかかっている。
都市交通の話題の前に、国土レベルの交通ネットワークについて紹介したい。フランスは世界に誇る鉄道王国だが、新幹線に超高速鉄道の導入の遅れをとったものの飛行機を使わなくともTGV網は、この夏にTGV―Medがマルセイユまで行き、国土全域がパリからほぼ6時間の範囲に入り込む状況にある。高速道路網も隣のドイツに大きく遅れをとっていたが、21世紀を迎え可住地のほとんどは高速道路から30分にカバーされるように急ピッチで整備をしている。このように均衡ある国土を目指し、生活の場としてどの地域も選択の対象となりうる環境づくりを少なくともインフラ面 では条件を整えている。戦後貧しい過疎地域の代表でもあったラングドック・ルシオン地方やサヴォア地方はそれぞれ海と山の観光地域として、国が積極的に整備の環境を整え、今では観光ばかりでなくフランスでも第2,第3位 の経済圏として発展させてきたように戦略的な均衡ある国土整備に成功している。こうした巧みな国の政策が都市においても社会体制として巧妙な仕組みを作り上げていることは、我々にとって非常に参考となるのである。一極集中のパリを中心とした強力な官僚体制と、一方で農業生産をベースにした集落レベルを単位 とした市町村をベースに社会を構成していること等、フランスと日本は社会形態も類似している部分が多い。

80年代の変革…地方分権化とLOTI(国内交通の方向付けの法律)

国土レベルの移動から、ここからは身近な生活と密接に関わる都市交通 について考えていきたい。
80年代に推進され現在のフランスの都市行政を支えている重要な社会変革として、地方分権化政策がある。自治体の最小単位 のコミューンに完全な都市計画の決定と実施を委ねたことは大きな意味があり現在のフランス社会を支える上で画期的であった。
コミューンの長は都市計画の王様と言われるほど市町村の物理的な生活環境の責務を負っている。当然財政的バックアップあるからこそ成立している。もう一方の重要な社会的価値観の転換を示すものとして、82年のLOTI(Loi dヤOrientation des Transports Int屍ieurs)が重要である。
車優先の社会を見直し、歩行者や公共交通の重要性を強調し、中でも公共交通 の合理的な体系整備を盛り込む都市交通計画(PDU:Plan des D姿lacements Urbains)の策定を義務づけ、土地利用等都市計画との整合性に配慮することが改めて示された。また、いかなる肉体的、経済的条件があろうとも人は都市を自由に移動する権利があると「人の交通 権」を表明したことは重要だ。その後、96年末の大気法でPDUは10万人以上の都市では策定が義務づけられるなど、特に環境面 において少なくとも都市交通では、車優先社会からの離脱をはかることが強調された。さらには、2001年のSRU法で都市の一体性強化のための都市交通 の重要性が指摘されてくる。

合理的な体制・枠組みづくり

都市交通が行政サービスとして重要な施策であり、市民の足の確保は公共側の責務である。このことから、公共交通 へは税金の投入が前提となっていることは、独立採算が公共交通の使命のように受け止められている日本とは異なっている。概ね運賃収入は公共交通 の運営のための1/3程度が一般的で、1/2を越えることはほとんどない。成績がよいのは公共交通 のインフラ整備を進めていないか、サービスレベルを制限しているとさえ考えさらにサービスの充実のため公共投資を進めるという構図でさえある。
都市内の公共交通サービスを効果的効率的に実施するため、公共交通 を一本化してオトリテ・オルガニザトリス(Autorit Organisatrice:交通当局)(以下AOと称す)を構成する。トランスポート・オーソリティと表現すれば理解しやすいだろう。AOは都市圏内の公共交通 に関する、計画、整備、運営すべての公共交通サービスの責務を負う特殊行政体である。個々のコミューンから契約により、交通 行政の権限をAOに集約している。都市の公共交通が統合化されることにより、合理的で経済的な公共交通 サービスの提供が容易になる。多くの場合実際の運営は民間の事業者と契約により委託して、民間のオペレーターは、AOの定めたサービスレベルを実現しさらに業績を上げるために努力するという巧みな構図を組み立てている。中世以来フランスでは公共サービスに民間事業者の活用をはかるPFIが一般 的になっており、インフラ整備の投資がトラムのような過大な事業でも採用されている。公共交通 の運営においても公共側の責務として必要な条件を満たす内容で民間事業者と契約により、公共側の負担を軽減し、民間事業者も厳しい条件の中でノウハウを蓄えている。近年の規制緩和や民間活力の導入に積極的な近年の世界の中でもフランスの事業者は急速にシェアを拡大している。 公共交通の整備、運営には一定規模以上の事業所から徴収する特別税というような交通 負担金(Versement Transports)も効果 が大きい。地方都市では、公共交通の内容により差があるが給与の上限1.75%まで認められる。新しい都市交通 システムを導入を意図するとき、国の補助金も含めて、この交通負担金の存在により財政負担をさほど心配する必要がないという効果 も大きい。