ジャン・プルーヴェに見る建築の未来像
Jean PROUVE, l'incarnation du futur de l'architecture

河辺哲雄 Tetsuo KAWABE

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ジャン・プルーヴェと建築の未来像

さて、我々はこうしたプルーヴェ建築を単なるあこがれのまま終わらせないためには何を学びまた何をすべきであろうか? プルーヴェが工場を持ちつづけたのは、決して既製品を量産することが目的ではなく、設計と製造を一体化することで常に部材を特注することを容易にし、建築を進化させつづけることであった。しかし、20世紀後半の産業経済社会は、そうしたプルーヴェの意図とは裏腹に、中庸な標準品を大量 生産することで企業利益を追求していき半世紀の間にひとつの産業形態が出来上がってしまったのである。
冒頭でも述べたような設計という名のアッセンブリング作業が定着してしまったのである。

少品種大量生産から多品種少量生産へ

一方で、近年のコンピュータ技術やレーザー技術の進展による工作機械の進化によって、金属加工はデジタルデータによる設計と製造のインターフェースが瞬時に行なえるようになってきている。
そして、こうした製造が一般化していけば標準品と特注品の生産上の手間の差は極めて少なくなり、コストをかけずに多品種少量 生産を行なえる可能性がでてきている。
現在、日本の戦後を支えてきた中小の製造工場は経営的に危機に瀕しているが、こうした21世紀の先端技術を使用したものづくりの復権と建築の質の向上のための新たな設計製造のシステムを構築することが必要になってきている。  こうした中、ジャン・プルーヴェが半世紀前に実践した、建築に対する姿勢と道のりは、大いに再評価されるべきであろう。
ル・コルビュジエはかつてこうしたプルーヴェを評して「未来の建築家、すなわち建設家」と称し賞賛したのであるが、コルビュジエの言った「未来」とは実は「今」なのかも知れない。

参考文献;
Jean Prouv Complete Works Vol.1;1917-1933;Peter Sulzer 1995 Wosmoth
Jean Prouv Complete Works Vol.2;1934-1944;Peter Sulzer 1999 Birkhause
Jean Prouv;Catherine Coley 1993 Centre George Pompidou
Jean Prouv氏iune architecture par lユindusutrie); Benedikt Huber,Jean-claude Steinegger 1971 Les Edition dユArchitecture Artemis Zurich
Prouv Cour du CNAM 1957-1970 Essai de reconstitution du cour partir des archives Jean Prouv;textes de Jean-Francois Archieri et dessin de Jean-Peirre Lavasseau Pr伺ace de Huber+Damisch
「世界デザイン会議議事録」美術出版会編 大衆のための建築;ジャン・プルーヴェ
「建築」1962年9月号 特集:建築量産化への挑戦;池辺 陽、黒川紀章、柳 宗理、フランソワーズ・ショエ他
「建築生産」1972年2月 ジャン・プルーヴェと工業化建築;ジャン・プルーヴェ、進来 廉/連 建築設計事務所
「新建築」1971年7月号 記事;建築の工業化をめぐって;ジャン・プルーヴェ、黒川紀章、進来 廉
「GA HOUSE」1987年n21 ジャン・プルーヴェ自邸
「群居」31号 二人の建築家 松村秀一
「Glass & Architecture」1996年夏号 ジャン・プルーヴェ もう一つの建築家像;ピーター・スルツアー進来 廉、松村秀一、玄・ベルトー・進来
「Glass & Architecture」1997年夏号 ジャン・プルーヴェ メタルエイジの職人技;松村秀一、玄・ベルトー・進来



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