フランスにおける今日の建築教育
L'enseignement de l'architecture en France

山名善之 Yoshiyuki YAMANA

Depuis septembre 2000, la reforme des 師udes dﾕarchitecture est entr仔 en vigueur. Elle se traduit par un allongement du temps dﾕ師ude de cinq � six ans (mais depuis quelques ann仔s d史� la duree r仔lle des 師udes est de 8 ans en moyenne ).Gr営e � cette reforme, le dipl冦e dﾕarchitecte dplg est reconnu comme un dipl冦e de troisi塾e cycle. Depuis 1995, la r姉rganisation a 使alement touch� les 残oles notamment en d残oncentrant les moyens parisiens au b始伺ice de la province. Ainsi aujourdﾕhui on compte 20 残oles dﾕarchitecture en France, dont 4 � Paris et 2 en r使ion parisienne. Cet article est issu dﾕun entretien avec Francis Lew de la Direction de lﾕArchitecture et du Patrimoine - sous direction de la formation des m師iers et de la Recherche architecturale et urbaine au Minist俊e de la Culture.


フランスの建築教育に学生としてまた教師として双方の立場から係わった経験をもとに、フランスの建築教育について報告させていただく。
私のフランス留学生活は'95年秋の建築学校ストライキ（gr竣e）から始まったともいえる。'95年5月にミッテランからシラク大統領へとかわり、その後、建築学校も所轄省庁が施設交通 省から文化省へと移行するなかで、数年来くすぶっていた建築教育改革の議論が再燃しはじめた。建築教育再編の議論のなかで学生あるいは教員によるストライキが何度か起こったが、そのような'95年秋に、私はパリ・ベルヴィル建築学校のDPLG課程へ編入し留学生活を始めることとなった。数年間の建築教育再編の議論の末、移行期間を経て、 昨年2000年9月から建築教育新制度がスタートしたが、この5年間に多くの建築教育に関するシンポジウムなどが開かれ、私もこの話題に無関心ではいられない状況におかれることとなった。
建築教育が'68年まで美術学校エコール・デ・ボザールのなかで行われていたためか、フランスの建築教育は、工学系主体の日本のものとは少し様子が異なる。カリュキュラムのうえでも低学年における基礎美術教育が徹底し、また全体として設計意匠教育が主体となった教育体系が築かれている。そのためもあってか、フランス人学生の図面 などの表現の豊かさや、建築意匠上の巧みさにはいつも感心させられてきた。「エンジニア」「建築家」との分業が進んでいること、またエコール・デ・ボザールから建築学校に至る建築教育が、この「建築家」育成の為の教育を掌ってきたことを考えあわせると、日仏間の建築教育の違いを理解する手助けになるのかもしれない。

'68年以降の建築教育制度改革

ここで、現在のフランスの建築教育制度を理解するために、エコール・デ・ボザールから建築教育が独立した'68年以降の建築教育制度改正を振返ってみる。'68年12月にエリート教育の象徴と批判されてきたローマ大賞制度が廃止され、パリに建築教育機関UPA（UNITES PEDAGOGI-QUES DﾕARCHITECTURE）が５つ設立され、建築教育の開放化が進められる。混乱期を経て'70年代初頭には全国に21（うちパリと近郊に8つ）の教育機関UPAにおちつき、それらはやがて現在の各建築学校となる。また同時にエコール・デ・ボザールにおける建築教育が職能教育に偏りがちだったことへの批判を受け、文化省の指導のもと「研究」を推進するCORDAやDGRSTがスタートし、また建築教育においては建築史等のほか新たに社会学などの人文科学教育が重視されるようになる。
'78年4月には建築教育の所轄省庁が文化省から施設環境省へ移管されたのを機に、大衆化が進みすぎた建築教育への見直しが始まる。エコール・デ・ボザール時代の'60年には全学3000人の学生に対して50数人の教育者というように建築教育組織は小さなものであったが、UPA移管後、専任教員数も1970年には650人、そして1976年には911人というように肥大化の一途を辿った。学生数も'70年代を通 じて増加し、'78年には15000人の大台に達した。'78年4月の制度改革は、この増加、建築家免許の大衆化傾向に対して建築家職能団体等からの批判が増していたこと、また人文科学教育が重視されてきた一方、本来の建築家職能教育が疎かになり始め、建築家としての職能資質低下が叫ばれ始めたことを受けての見直しであった。結果 として進級審査を厳しく卒業生の増加速度を緩めることや、建築の技術教育や製図教育を重視することを確認し、新たに職業研修を義務付けることなどの、教育プログラム上の一部見直しに留まった。
建築教育のUPA移行後15年が経過した'84年、UPA制度の改革が行われた。この改革により、建築教育機関UPA（UNITES PEDAGOGIQUES　DﾕARCHITECTURE)の名称が、建築学校（ECOLES DﾕARCHI-TECTURE）へと変更された。例えばUP8はパリ・ベルヴィル建築学校となり、UP6はパリ・ラ・ヴィレット建築学校と現在の名称に改められたのであった。そして修学期間も6年間の就学年間を5年間に短縮し、前期2年、後期3年と改定され、新たに前期修了者にDEFAを、後期修了者にDPLGの各ディプロムを授与することになった。また各UPAに任されていた教育カリュキュラムを、DEFA課程においては8教科群に、DPLG課程においては12教科群に再編成することと、省庁によって定められた必修科目を基にカリキュラムを組み上げることを各建築学校へ義務付けるというように、必修共通 科目を全国統一し、国家資格である建築家資格DPLGを保証したのであった。同時にポスト・ディプロムの建築の高度専門研究を充実させ、各建築学校にCEAAを設けることを認めた。この様にUPA設立から15年を経て、始めて建築学校の省庁主導による教育制度が確立されたのであった。
この'84年の改正による制度が多くの矛盾を持ちながらも、昨年2000年9月まで継続していた。例えば修学年限に関して、この時の改正により6年制から5年制へと移行したが、教育カリュキュラム編成が修学年限の短縮により軽減されたとはいえず、平均修学年は今日まで約8年のままで推移してきた。
また、教育カリキュラムにおいても省庁により全国的統一がかけられたものの、今日でも各建築学校により特色ある教育内容が組まれている。もともとUP2、UP4はエコール・デ・ボザールの旧システムを継承し、UP6は研究を重視しながら大学システムを参考にした学際的な教育システムを構築し、またUP8に関してはアメリカの大学システムを参考にしながら教育カリキュラムが組上げられていった背景がある。このように理想とする教育システムの違いから、各UPAが編成されていったことを考えると、省庁が教育カリュキュラムに全国的統一をかけようとしても一筋縄にはいかないのは当然である。実際は、省庁による教育統一カリキュラムと、各UPA設立時の特色のあいだで、各建築学校の教育システムが今日に至るまで組上げられてきているということがいえる。同じパリの建築学校でもラ・ヴィレット建築学校とベルヴィル建築学校とでは教育プログラムがかなり違うのは、UP6とUP8の設立まで遡れば理解できる。

2000年9月よりの建築教育新制度

昨年2000年9月から建築教育の新制度が、'97年から'98にかけての建築教育新制度政令・法令に基づき、移行期間を経て、スタートした。
'95年秋の建築学校ストライキ中に、'84年改正の制度が抱えていた矛盾や問題が表面 化され、またヨーロッパ統合により、ヨーロッパ内統一建築家資格などとの互換性をとる為にも、制度の改正が必要とされ、就学期間は各段階2年制3段階の合計6年制に改正された。
建築学校内に設けられたCEAAは大学博士課程等との互換性がなかった為、専門研究を続けても博士学位 に結びつかないという制度上の問題もあった。また建築周辺の専門領域が複雑拡大化している状況の中で、所謂「建築家」を育てる為の建築教育を6年間かけて、多数に行う必要があるかなどの問題も指摘されていた。今回の改正の特色のひとつは、6年間の就学期間の2段階目と3段階目、つまり4年生と5年生の間にメスをいれたことであった。建築学校において4年生つまり2段階目までを終了したものに対し、残りの2年にあたるコースを選択することを可能にしたのである。
DPLG課程に進学し「フランス政府公認建築家DPLG」を取得する以外に、例えば都市計画や都市行政、音響や空調技術、また舞台装置などの専門家となる為の専門教育を受けるDESS課程に進学することや、大学機関の社会学科、都市計画学科、或いは美術史学部建築史専攻でより高度な研究を行い博士学位 などを目指すことも可能となったのである。この高等専門研究へ道が開かれたことに伴い、建築学校内に'84年に設立されたCEAAは廃止されることとなった。
3段階課程DPLG課程においても、設計・ゼミの他に論文を提出することが改正前と同様に引き続き求められている。また改正前最低2ヶ月が義務付けられていた実務研修が、改正後最低4ヶ月とされ、実務研修がより強化されることとなった。DPLG のディプロム取得に際し、建築家で建築学校教授を委員長とする審査員5人の前で個別 に行われるプロジェクトの発表審査会は存続している。